「マルチサイクロン」という言葉をご存知ですか。聞いたことがある方が大半占めている一方、その言葉が意味するところを正しく説明できる人は少ないのではないでしょうか。「マルチサイクロン」は、「マルチサクロン」と呼ばれることもある強力な旋回気流で粒子を遠心分離する集塵機である小型サイクロンを複数機並列につなげたもののことです。なぜサイクロン自体を大型にせず小型のものを並列につなげるのか不思議に思う方もいるかもしれません。
これは、機械式のサイクロン集塵機は小型のものほど集塵効率が優れたものを作れることに由来します。そのため、高い処理力が求められる場合たくさんの小型サイクロンを並列につなぐことで圧力損失への負荷を大きく上げることなく高効率な集塵器の作製が可能になるのです。そんなマルチサイクロンは、各サイクロンのつなぎ方の違いにより複数のタイプに分類することができます。分岐ダクトから均等にガスを送入する方式が最も一般的ですが、軸流サイクロンを用いる方式も近年増えてきています。
その際いずれのマルチサイクロンも必ず各サイクロンにかかる圧力が均等になるよう設計されているのが特徴です。また、マルチサイクロンの活躍の場は非常に多岐にわたります。ボイラや焼却炉、乾燥機から排出される排ガス中の異物除去といった工業的な場面だけでなく、食品などもその対象です。そのため、知らぬ間に私たちの生活を支えてくれている欠かせない技術の1つと言えます。